「そろそろ 帰ろっか」 「そうね」 えぐれた月に微笑ん で、妖精は手すりを 放した。そのままど こかへ流されていっ てしまいそうな儚さ で、くるりと回転す る。花びらのように スカートが広がる。 澄んだ百合の香がし て、ブタはくらりと した。 「おやすみ」 現実的な声を聞いて 息を延ぶ。 「おやすみ」 ちょきちょき手をふ ると、彼女は手をつ ぃっとあげた。サン ダルをひきずる音さ え楽しむように、さ っさと歩いていく。 「おやすみ」 もう一度言って、大 きくあくびした。