無言のブタをぽむっ
と軽くたたいて、少
女はかさかさと笑
う。
「だから、幸せそう
な彼女をずっと見て
いることしかできな
かったの。
だけど……
寂しくてね。いつも
その幸福を壊したい
と思ってたみたい。
いつか絶対女の子を
不幸にするって、怖
がってた。んで、そ
れだけは絶対するも
んかって言って、死
んじゃった」
「それは……」
ぷきっと
夜空を仰ぐ。
「なかなか、せつな
い」
「なかなか、ね」
ふたりして、星のあ
かりを瞳に沈める。
音もたてずに流れる
光にブタは時おり目
を見張り、少女は
何も見えてないみた
いに息をしている。
水ぎわにはえる草の
ざわめきに洗われな
がら、首が痛くなる
までそうしていた。



