「そ、そうかしら」
「しかも……かなり
単純な女の子だね。
おとぎ噺(ばなし)
じゃあるまいし、ほ
んとにそれだけで結
婚しちゃったの?」
うろんな目をむけ、
ぶぅぶう、鳴く。
「うん、
それだけで」
ふらふらとさ迷って
いた視線を固定して
妙に、きっぱりと言
う。
「女の子は単純だっ
たのよ。すごくすご
ーくね。むかつくく
らい単純だったわけ
。恨んでもしかたな
いのよね、そこも含
めて好きなんだもん
。だから、結婚して
『楽しそうな
女の子』を
見るのはかなり嬉し
かったのよ」
架空の話だろうに、
憂いを帯びた顔に
なる。
「でもやっぱり、同
じくらいに悲しくて
たまらなかったの」



