「ふーん。そういえ
ばね、あたしがあず
かった手紙も、自殺
者のものなのよ。手
紙を届けたら、妖精
王が彼の願いを叶え
てくれるの」
「へぇ……恋人?」
「ちがう。足みたい
なもん。でも死んじ
ゃったから、最後く
らいあたしが足にな
ってあげるの」
「ふぅん」
水っぽい匂いに鼻を
ひくつかせ、ブタも
欄干によっかかる。
せらせらと流れる川
面には、月の光が藻
のように揺れている
。
「さしつかえなかっ
たら知りたいんだけ
ど」
金粉をまぶしたよう
な夜空に、チョキを
突きさす。
「なあに?」
甘くかすれた声。妖
精の声帯は、ザラメ
でできているのだろ
う。



