「……あんた、から
かってんの?」
「まじだけど?」
描かれたような眉を
もちあげて、首を右
に傾ける。切り口の
まっすぐな髪がブタ
の頭にかかる。ぷき
ぷき体を離すとブタ
は寸足らずな腕を
組み、少女は川を背
にして小さくあくび
した。
「知ってるよ。ここ
らへんで暮らしてん
だから。ここね、自
殺の名所なのよ」
「まっさかあ」
そんなの初耳だ。土
左衛門があがるのは
有名だけど。
「知らないの?」
葉ずれのように笑っ
て、イタズラっぽく
口角を引きあげる。
井戸の底にあるかも
しれない小石みたい
な黒い瞳は、しんと
冷えている。
「知らない……」
桃色の頭をふる。



