「そうだ」
ヒヅメをポケットに
さしこみ、白い楕円
形のものをとりだす
。それはビーズで飾
られた、空っぽの卵
だ。
そうだ。
少女は、下におろし
ていたボストンバッ
クのチャックを開く
。
「げっ」
ブタは退(しりぞ)
いた。大量の茶封筒
がひしめいている。
「遺書……?」
「うん」
「そんなに書いたん
だ……」
にっこり笑ってうな
ずいた。
「それが、ブタが永
遠に捨てたいもの?
ちゃらちゃらしてか
わいいのに」
「うん」
「ふーん」
並んで、スッと背筋
を伸ばす。
「えいっ」
星を打ち落とすくら
い遠くに、それらを
投げる。ぽちゃんっ
と軽い水の音がした
。



