絶対に鬼の形相だ、
と予想して。でも違
った。全然キレてな
かった。彼は、まる
で大人の女の人のみ
たいな、静かで悲し
い表情をしていた。
はしゃぎ声が、遠く
なる。
「きみひろ君」
心配になって声をか
ける。彼は微動だに
しない。何も聞こえ
ず何も見えていない
ような虚空が、その
瞳を支配している。
わけがわからない。
妹がキスされたの
が、そんなにショッ
クなの? 青ざめる
ほど?
「きみひろ君」
ざわざわと川べり
の草がこすれあう。
触れたら……パリン
と砕けそうなくらい
、彼は張りつめてい
る。ゆすりたいけど
、壊れそうで、さわ
るのが怖い。
「きみひろ君!」



