風の強い日だった。
頭上高く広がる、パ
ステルカラーのブル
ー。ふんわりとした
、このみのまつ毛で
、日の光が遊んでい
た。
まぶたの裏に浮か
びあがってきた過去
のでき事が、ふわふ
わと涙腺から溶けて
いく。とことんしゃ
くりあげて、とこと
ん空っぽになって、
顔をあげると、優し
い眼差しに包まれて
いた。すぅっと、胸
の奥まで浸透して、
精神を安定させてい
くような視線。月あ
かりみたいに澄んで
いる。
「じゃあ……これ、
いらない?」
彼は黒く染めてある
軍手をぬいで、懐中
電灯で手のひらを照
らす。
「ドングリ……
なんで?」
目頭が熱くなる。



