肺にすいこむのをた
めらうくらい、濃く
黒い煙が、もうもう
とたちこめる。イン
ラインスケートを駆
使して、よしおは彼
女らを殴り倒してい
く。少女の声の正体
は、彼が肩からかけ
ているラジカセだ。
ゆみはメリケンも
木刀も放り捨て、校
舎に逃げこんだ。
「なにあれ……」
小刻みに震える手で
ケータイを取りだし
、操作する。
「圏外……? あり
えないんですけど」
足の裏がじわじわし
てきて、冷たい汗が
脇腹をすべりおりる
。
くす、くすっ
くすくすくす。
すすり泣きのような
ものが、聞こえてき
た。息をつめる。
「誰……?」
くすくすくすっ。
違う……。
唾を飲みこんで、
目をつむる。
笑ってる……。



