あたしは
雨のむこうに手を
のばした。


たたき落とされても

殴り飛ばされても。

ねぇ、なんで……。




 熱を帯びてぶあつ

くなったまぶたをあ

けると、

薄いカーテンが波打

つのが目に入った。

街頭の孤独な光に

下から照らされて、

室内はふんわりとし

た青白さに侵食され

ている。


なんとなく寝ている

のがだるくなって、

体を起こす。

心細げな影が、左手

からしたたり落ちる

ように斜めむこうに

のびた。


カーテンをあける。

薄く張った雲。

でも、晴れている。

ばらまかれた砂のよ

うな星が輝いてい

る。

手のひらで、Tシャ

ツから突き出た腕に

触れてみる。

まじまじと眺めて、

脚も引きよせて

ちゃんと確かめる。


傷なんて
どこにもない。

ゆめ。

そうだ、夢だ。

ぼうっと意識が濁り

かけた時、

なにかの報知器のよ

うに単調な音が鳴り

始めた。

目覚まし時計。

頭のすみずみまで覚

醒していく。

そうだ。

やるべきことを思い

だした。慌ててケー

タイを探す。