錯覚ですませてしま
えるくらいに一瞬の
ことだった。しかし
、影絵のように
揺れている枝葉は、
そこに何かが落ちた
ことを示している。
誰もが息を飲んだ。
目配せし合う。
「なんだ今の、
おい」
赤髪の女の視線を受
け、数人が様子を見
に行った。女は暴走
族のリーダーで、抗
争の時に死体寸前の
仲間を目にしたこと
もある。ちょっとや
そっとじゃ動じない
自信があった。が、
まだ吸える長さの煙
草を放り、ぎりぎり
と踏みつける。動揺
している。すると、
また悲鳴が響いてき
た。同じような人影
が、時を巻き戻され
たように屋上に立っ
ていた。ゾッと肌が
粟立つ。



