゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚ 夜の端 。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。


猫は、つぶらだった

眼球をなくしていて

針ネズミのようなあ

りさまだ。びっしり

と突き立てられた針

の隙間から見える皮

膚には『呪』という

文字がビーズのよう

にぎっしりと記され

ている。軽くショッ

ク。

「泣かないかな」

くすくすくすくす。

おかしげな笑い声で

ざわざわしはじめる。
「泣け」

荒れ果てた原っぱで

ひとりで息をしてい

るような心もとなさ

、よるべなさ。

 泣きたいけど。

「なけなけなけ」

「泣け、なけなけ」

「泣かなかったら

100円」

しんとした室内で、

かさかさ囁かれる悪

意に目をつむる。

 泣けない。

「なんでこんなこと

したの」

たまらなくなって、

つぶやく。ぐっと喉

がつまる。すごく怒

っているのに、それ

が出せないくらいに

は、悲しかった。