でもそんなわけにも
いかない。
「頑張れ」
自分で自分をはげま
して手をのばす。そ
こから、時がとまっ
たみたいに動けなく
なる。じわじわと足
先から寒気のような
ものが這いあがって
くる。皮膚の下をゴ
ウゴウと血液が流れ
ていく。
「どうした?」
スコンとした声に、
呪縛がとける。
彼女が青ざめてふり
返ると、出席簿を頭
にのせた担任がふに
ゃんとした笑顔を見
せた。
「いえ……ちょっと
。おはようございま
す」
「おはよう。早く入
れ。あと5秒で遅刻
だ」
ふっと肩の力がぬけ
た。入ってもいいん
だ。本鈴と共に勢い
よく戸をすべらせた。
戦いがはじまる。



