「おいゴミ」
迷いなくなおをさ
し示したつま先がじ
わじわと歩いてくる
。優しい記憶からズ
レていくこのみとの
関係に、胸を潰しか
けている場合ではな
い。目の前に迫った
危機に、あごをひい
て床を踏みしめる。
「おまえ、やったっ
しょ?」
胸ぐらをつかまれた
。えりを留めていた
ボタンが千切れる。
「やってない」
きっちり否定する。
「やったっしょ?」
ぎらぎらした眼球に
恐怖を感じる。だけ
ど必死に、にらみ返
す。猛獣から目をそ
らしてはいけないの
だ。
「吐けや」
ガンガンと壁に頭を
ぶつけられた。鈍い
痛みとめまいがする
。別のものを吐いて
しまいそうだ。



