くっと顔をあげて
勇ましく足を踏みだ
す。
しかし、教室の前
まで来ると、結界で
もはられているみた
いになおは前に進め
なくなる。中からは
楽しげな笑い声が聞
こえてくる。手拍子
や誰かが誰かを追い
まわしているような
にぎやかな震動。な
おが戸をあければそ
れは夢みたいに消え
さる。テープをかえ
たみたいに、湿った
忍び笑いに代わる。
それもつらいけど
もっときついのは……。
木製の板にほっぺ
たをはりつける。笑
い声に耳をすませ、
まつ毛をふせる。
……このみ。
聞きなれた声をつ
かんだ。柔らかくて
角のない、優しい声。
いつまでも聞いてい
たい。教室ごと巨大
な卵に閉じこめて。



