ぎりっと唇をかんだ
。勇気をふるいたた
せる。人、呼んでこ
なくちゃ。彼を残し
て縦横無尽に走り始
める。通りすがりの
女の人をひっぱって
、わけを話すと、公
衆電話で救急車をよ
んでくれた。少年の
倒れている場所まで
案内する。彼は虫の
息だった。体中から
血液が流れ出してい
る。
めまいがする。
あたしは彼を壊さな
いように注意を払っ
て、崩れ落ちそうな
手をにぎる。
「もうすぐ救急車が
来るよ。大丈夫だよ」
彼はぼんやり微笑ん
でいる。目をあける
のが辛そうだ。その
せいでそう見えるの
かもしれない。
「おれ……おまえ知
ってる。すき」
力をふりしぼるよう
にささやいたあと、
何かがなくなったみ
たいに、ダランとし
た。



