「そ? よかった。
俺、菓子は結構作る
んだ。料理は全然好
きじゃないんだけど
……」
淡々と返していた彼
はなおのまつ毛にゆ
れる雫を見て、息を
つまらせる。静かな
表情に、
ゆらゆらと
なんとも言いがたい
波紋が広がっていく
。
「おいしい」
涙が玉粒になってポ
ロポロと落下する。
手の甲でぬぐっても
ぬぐっても、次から
次へと転がり落ちて
いく。
「泣くほどおいしい
よ」
苦しまぎれのごまか
し。返事はない。
彼は途方にくれたよ
うにこちらを見てい
る。
吉良とみゆがうるう
るしながら、大げさ
に抱きついてくる。
きみひろは魂を抜か
れたような目をして
いる。
「なんとかしよう」



