「い、いえいえ。あ
の、もうだいぶ遅い
ですし……」
「聞きなさいよ、ブ
タさん」
肩をつかんでないほ
うの手で、ジャケッ
トのポケットをさぐ
る少女に、ブタは内
心悲鳴をあげた。こ
んな時間にうろつい
てるやつなんてろく
なもんじゃない。自
分のことは棚にあげ
て、考える。自殺し
ようとしてたみたい
だし、気がふれてい
るかもしれないし…
…。ナイフでもださ
れて刺されたらどう
しよう。
どうしよう、
どうしよう。
滝のように汗をかく。
「これあげるから、
まあ聞きなさい」
しかし、そう言って
手のひらにのせられ
たのは、透明な袋に
包まれた、ひとつぶ
の飴(あめ)だった。
白い球形に、色とり
どりの糸が交錯して
いて、鼻に近づける
とうす甘い匂いがし
た。



