ベステモーナはパチリと目を開けた


「あれが………『人間』」


大講堂へ行くための並木道
直ぐに見つけた人間の少年を苛立ちの含んだ瞳で思わず睨んだ


八つ当りにも似た感情は入学式会場で表に出てしまった


魔力を測る石に魔力を込める
あんな初歩的なことさえできない少年が人間?


ベスの落胆は最高潮を迎え、言葉を放つ


「ちょっと、貴方何してるの?」


間近で見上げて来た金の瞳


「貴方ふざけてるの?こんなの子どもにだって息をするくらい簡単にできるわ」


ムッとしたように少年は眉を寄せて言い返す


「誰もふざけてなんかねぇよ。こんなの初めてやるんだからしょうがないだろ」
「初めて?…………貴方……人間よね」


「ああ」



少年はなぜ怒りをぶつけられているのか解らない、といったような表情だ
しかし、ベスにとっては解らないことがわからない


「百年ぶりに入学許可の出た人間だから、もっと期待してたけど」


ベスはそのまま踵を返した

「期待外れだったわ」



少年が何か言ったように思ったが、ベスにはそれ以上耳に入ってこなかった