「でも、ここにはさすがに来れません。風の賢者が治める地にわざわざ足を踏み入れることは、してはならないことだもの」


ベステモーナは断言するがフェイトには疑問しか残らなかった
あまりに不可解な事だったからだ


人間の価値観がここではずれているのかとも思ったが、パシィやブラッドでも解らないことなのだ


初勝利に沸くクラスメイト達の騒がしさに夜はあっという間に過ぎた


アパートに帰り疲れてベッドに倒れこんだフェイトは、その日から漆黒の少女の夢をみることになる



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少女はどこかで見たような漆黒の瞳をしていた


やはり顔立は印象に残らない
腰のあたりまである漆黒の髪、着ているワンピースまで漆黒で、まるで闇の化身の様だった


少女が笑う気配がする


雪のように白い肌
小さな口が微かに動いた


『 』


何かを口ずさんだが、フェイトには何を言ったのか分からなかった


けれど、何故かそれは切なく、哀しく聞こえた



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クラリスは自室で闇夜を見据えてため息をついた


「貴方にはまだ、あの子に合わせるわけにはいかないのよ」


おっとりとした口調だが、その奥には強い意志が垣間見える


「ゾフィーに頼まれたの。貴方でも干渉することは許せないのよ」


闇の色が深くなった気がした