アンジェリーナは平然を装う
背中には冷たい汗が流れた
「『魔法騎士』のアンジェリーナ・カルロッテと言えども、私に適わないことは赤子でもわかるわ」
漆黒の瞳を細めて少女は笑う
アンジェリーナは顔から感情を削ぎ落とすと、鎌を取り出す
取り出すと言っても、どこかに持っていたわけでわない
端から見れば、手の中で空間が歪み彼女の身長程はある首切り鎌が姿を現す
アンジェリーナは鎌を構えて少女を冷たく見据えた
「やってみなくちゃ解らない」
「フフフ……貴女じゃムリですわ」
少女は嗤う
「狂った復讐者でしかない貴女じゃね」
少女は胴から真っ二つに裂かれた
アンジェリーナが容赦なく鎌を振り抜いたのだ
しかし、少女から深紅の血が吹き出すことはなかった
少女の姿は陽炎のように空気に溶ける
少女の嘲笑が響く
「クラリスは優しいのね……こんなガラクタを面倒見るなんて。でもあの子は渡さない………ずっと待ってたわ………わたくしのものよ……」
そのまま少女の声は遠退き、アンジェリーナだけ残された
アンジェリーナは紫暗の瞳を伏せて手に持った鎌を見下ろした
生を狩るためだけの形
それは自分そのものの形
「……貴方に言われなくても解ってるさ」
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フェイトは不貞腐れていた
ベステモーナは呆れたように言った
「まったく!戦闘中に寝るなんて、注意力に欠けすぎです」
「だーかーら!よく覚えてないんだよ」
今は都市部にある店で打ち上げをしていた
Aクラスは見事にクラス対抗戦に初勝利したのだ
「なぁ!みんな」
飲食店の1つを貸切っているため周りは喧騒に満ちていた
近くにいるブラッドやパシィ、レクルに言えば、そろって何とも言えない顔をした
「そうだな……本陣を待っていて途中から本当に記憶がないんだ」
「いつの間にか寝てたわ」
「……俺たちは何かの魔法にかかったんじゃないか」
ブラッドは相変わらず憮然としていたが、それでも声には疑問が含まれている


