魔法学園‐メディア‐




フェイトは自分の世界はとても恵まれているのだと思った
確かに理不尽な犯罪はある
しかし、わけの分からない奴らにいきなり襲われるなんてことはない
しかも、魔法を使わなければ対抗出来ないなんて事はない


パシィやレクルの世界ではそんな奴らと戦う事が当り前なのだ
そのためにメディアで魔法を学ぶ


だから……?


だから、クラス対抗戦もあるのだ
学友が相手を全滅させるまで戦う
その意味


(俺は…………)



なんて気楽な考えだったんだろう……………



クラス対抗戦はゲームのような物だと思った
なぜ、ベスが頑張って、むしろ必死に取り組んでいたのかわからなかった


ただの負けず嫌いの一つぐらいに思っていた
けれど、違う


きっと、当り前なのだ


戦うということが
生きるために…………



フェイトはここに来て感じた違和感にたどり着いた



*******



「あら、大変ね」


口調は柔らかに、クラリス・アレイスターは困ったように首をひねった


「まだ早いというのに……あの子が来てしまったわ」


クラリスは座っていた椅子から立ち上がり、窓の外を見た


裏門に干渉者がいる



*******



フェイトはまた不意に何かを察した
嫌な悪寒ではない……どちらかと言うと、敵意は無いが気配を隠そうとしているものの類い
何故かフェイトにも分からないが、ディンを何度も見つけている時の『感』だ


「おい、アレ」


フェイトが言えばブラッド達も気付いた


裏門の外側に少女が立っている
制服は着ていない
しかし、この学園都市でメディアの生徒以外の子どもはいないはずだ

少女はフェイトよりは多少幼く見える
黒い髪に黒い瞳
着ているワンピースでさえ漆黒だ


ブラッドは珍しく眉根を寄せて少女を見ている
パシィ達も不思議そうに見ていると思った、しかしパシィ達は寝ていた


「えっ?」


フェイトは困惑する
なぜ寝ている?
疲れたのだろうか、にしても不自然な寝方だ


「なぁ、ブラッド?」