フェイトは自分の世界はとても恵まれているのだと思った
確かに理不尽な犯罪はある
しかし、わけの分からない奴らにいきなり襲われるなんてことはない
しかも、魔法を使わなければ対抗出来ないなんて事はない
パシィやレクルの世界ではそんな奴らと戦う事が当り前なのだ
そのためにメディアで魔法を学ぶ
だから……?
だから、クラス対抗戦もあるのだ
学友が相手を全滅させるまで戦う
その意味
(俺は…………)
なんて気楽な考えだったんだろう……………
クラス対抗戦はゲームのような物だと思った
なぜ、ベスが頑張って、むしろ必死に取り組んでいたのかわからなかった
ただの負けず嫌いの一つぐらいに思っていた
けれど、違う
きっと、当り前なのだ
戦うということが
生きるために…………
フェイトはここに来て感じた違和感にたどり着いた
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「あら、大変ね」
口調は柔らかに、クラリス・アレイスターは困ったように首をひねった
「まだ早いというのに……あの子が来てしまったわ」
クラリスは座っていた椅子から立ち上がり、窓の外を見た
裏門に干渉者がいる
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フェイトはまた不意に何かを察した
嫌な悪寒ではない……どちらかと言うと、敵意は無いが気配を隠そうとしているものの類い
何故かフェイトにも分からないが、ディンを何度も見つけている時の『感』だ
「おい、アレ」
フェイトが言えばブラッド達も気付いた
裏門の外側に少女が立っている
制服は着ていない
しかし、この学園都市でメディアの生徒以外の子どもはいないはずだ
少女はフェイトよりは多少幼く見える
黒い髪に黒い瞳
着ているワンピースでさえ漆黒だ
ブラッドは珍しく眉根を寄せて少女を見ている
パシィ達も不思議そうに見ていると思った、しかしパシィ達は寝ていた
「えっ?」
フェイトは困惑する
なぜ寝ている?
疲れたのだろうか、にしても不自然な寝方だ
「なぁ、ブラッド?」


