フェイトの眼には何の変哲もない林が広がるばかりだ
しかし、ある一点を見て何かが気になった
それにレクルも気が付いたのか虫眼鏡から目を離してポケットを探りだした
「フェイトさん、コレに魔力を込めて置いて下さい」
「何だこれ?」
渡されたのは魔法陣の書かれた小さな紙片だった
「あの辺りにトラップ魔法がかけられているの、それを反転させる罠をかけておくから」
「あぁ、やっぱり。わかった」
「……?」
フェイトがレクルの指差した場所を見て頷けば、レクルは不思議そうにフェイトを見返す
フェイトが何かを感じた場所にやはりトラップがあったのだ
フェイトは紙片を受け取り魔力をこめ始める
あまり早くこめる事は出来ないが、魔力をこめるのは魔法の基本だとベスに散々練習させられたのだ
何とか魔力をこめて紙片をレクルに渡す
レクルはスペルを乗せて紙片を吹いた
「カボチャのイタズラ 鼠の尾を追え」
レクルの息に吹かれた紙はトラップがある林に向かって行く
「これであのトラップは大丈夫です。次に行きましょう」
その時、空気を震わせる様な轟音が聞こえた
それにフェイトが反応すれば、それを察したのかブラッドが淡々と呟いた
「本陣がぶつかったな」
「なんか……鬼気迫る音だな……」
「遊びじゃない。当り前だ」
いっそ冷たい程にフェイトの他人事のような言葉を切り捨てる
ブラッドは、ただ当たり前のことを言ったのだが、それを聞いてフェイトは言い様のない塊を抱く
何故そんなに必死になるんだ……………?
その言葉は口にしてしまえば、それは無神経だとフェイトは思った
フェイトには掴めない何かをブラッドやクラスメイト、ベステモーナも知っているのだろうとも思った
パシィが次のトラップを探しに跳べば、ブラッドもそれを追い掛ける
フェイトは背負われたまま何処かで弾ける音に耳を傾けた
「この戦いの意味は何だ?」
フェイトの言葉は疾走する風に掻き消された


