魔法学園‐メディア‐




「……ねぇ、ベステモーナ 。なんでそんなに汚れてるの?」


ディンは恐る恐る呟いた


ベステモーナの付けているエプロンは所々、怪しげな色合いの染みが出来ている


恐ろしい事にその染みの色と、似た色が鍋から点々と吹き出しているのはどういうことだろう?
ブラッドは嫌な予感がして目をそらした


「よくぞ聞いてくれましたディン君」


何処か誇らしげに胸を張るベステモーナ


「情けない事に、今日の騒動のせいで熱を出してしまったフェイトの為に、わざわざ私がお粥を作ったのです」


小鍋には蓋がかけられている
それをベステモーナはとった


「力作ですね。コレで熱などイチコロだわ」


熱より先にフェイトが一殺な気がする


小鍋からはモワリと何とも言えない刺激臭が漂った


バンパイアは肉体が超人のように強化された生き物だ
嗅覚も人間より数段高い
ブラッドとディンは本能的危険を察知してそそくさと立ち去ろうとした


「いやー…ベステモーナがいるなら僕たちはもう帰っても大丈夫だよね?」

「……俺たちは失礼する」


2人が出ていこうとした時、フェイトが目を覚ました
部屋を侵食する刺激臭のせいか、苦しげに呻いて首を起こした


「ん……あ、ベス?……ディンとブラッドも」


熱のせいか潤んだ目でフェイトが3人を見た


「俺……倒れたのか?」

「フェイト、貴方は熱があります。寝ていて下さい」


ベッドまでベスは駆け寄り、上半身を起こそうとするフェイトを制する
ブラッドとディンは哀れみのこもった目をフェイトに投げ掛けた


フェイトの顔は弱っている自分に優しく看病をしようとする…………ように見える女の子に対しての感謝の念が表れていた


しかし、それもベステモーナの持つ小鍋を見て凍り付く


「これを食べて寝て下さい。直ぐに熱なんて下がるわ」

「イヤイヤイヤ……ベステモーナさん?」


フェイトの目には本気か!?
の文字しか浮かんでいない
ベステモーナは手にしたレンゲで謎の色彩をした物体をすくい上げた


「さぁ、早く食べて寝て下さい」


口元に運ばれたそれにフェイトは顔を青くした