ゴクリ、と生唾を飲む
ブラッドは別にお腹が空いていたわけではないが、何故か喉が渇いた
ヤバイ、と何処かで警鐘が鳴っていたが止められなかった
一番、鼓動の熱い場所
フェイトの頸動脈あたりにブラッドはそっと、指先でそこに触れた
ブラッドの長く白い指は何故かそこから動かせない
フェイトに起きる気配はなく、熱のせいか頬が紅潮している
ブラッドはその首筋に爪を………いや、いっそのこと牙を立てたい衝動に駆られる
(……だから危険なんだ)
何故彼と、寄りにもよってただ一人の人間と同じアパートになってしまったのか
呪いたい気持ちで、荒れ狂う衝動をブラッドは押さえ込んだ
吸い付いたような自分の指先をフェイトから引き離した
すると突然、玄関の扉が開く
「フェイト!今日面白そうな事件起こしたってホント………って、ブラッド。何してんの?」
ノックも無しに入って来たディンにブラッドは無表情ながら内心、死ぬ程驚いた
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「知恵熱かな?今日は色々あったらしいよ」
ディンはブラッドから事情を聞くと笑いながら言った
ディンは今、フェイトの制服を脱がしていた
勝手にクローゼットの中を漁るのは抵抗があったが、ブラッドはパジャマらしきラフな服を引っ張りだす
今だにフェイトは起きる気配がない
「フェイトって制服弄ってないから脱がしやすいや」
フェイトの着ている制服は規定の物と変わらない
変わらないと言うのは、様々な種族が集まっているメディアでは、その種族が自由に生活がしやすいように制服を好きな形に加工してもいいことになっている
学年を表すネクタイと制服の上着にあるセーラーのような飾りの襟を変えなければ他は何をしても良いのだ
フェイトは珍しく何も弄っていない
ディンはフェイトを簡素なTシャツとジャージのズボンに着替えさせるとベッドに横にした
シーツを引っ張って胸元までかけた所で、ブラッドに向かって何かを投げてくる
それを上手くキャッチしてブラッドは軽く目を見開た