俺は本当にタイミングが悪いらしい
ブラッド・サバティエ
彼は自分の住む古い洋館風のアパートの前で立ち止まった
アパートは直ぐそこだが、そこに続く門の前で同じクラスのベステモーナ・アイスバーンが、ブラッドの隣人、フェイト・クロウリーを担ごうとしている所に出くわした
フェイトは何故かぐったりとしている
ベステモーナはブラッドに気付いた
気の強そうな青い瞳と目が合う
「サバティエ君、貴方にお願いがあります」
お願いと言っているが、それを断らせない何かが彼女にはあった
(俺は本当にタイミングが悪い………)
軽薄な弟、ディンよりも少しだけ早く生まれたせいであいつの兄として尻拭いをさせられて来た
それは決まっているかの如く………ブラッドはタイミングが悪かった
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ドサリ
と、ブラッドはフェイトをベッドに寝かせた
ここは勿論、フェイトの部屋だ
ベステモーナはフェイトをブラッドに任せて二階に上がってしまった
そう言えば、ディンが二階に彼女も住んでいると言っていたような気がする
フェイトは熱のせいで倒れてしまったらしい
意識もなく、瞼はかたく閉じられている
フェイトは『人間』だ
ベステモーナは戻って来ない
ブラッドはこのまま帰るのも忍びなくてフェイトを観察した
人間はバンパイアであるブラッドにとって、何よりそそる香りを放つ
特にこんな熱を出していては、血流が目に見えるようで……いや、目を凝らせば見えてしまう
ブラッドの視線は自然と喉元に行った
ブラッドもディンも人間の血を飲んだ事はない
成人するまでバンパイアの掟で人間の血は飲んではいけない事になっている
ブラッドもそんな事は百も承知だが、目の前にいる人間から目が離せない
不意に気が付いて、ベッドに横になるフェイトの襟元を緩めた
制服を着たままだし、ネクタイまでしている
息苦しいだろうと思い、緩めたがそれがいけなかった
首筋が先程よりも露になって一番強く脈打つ場所にブラッドの視線は囚われた