校長室
ウィリスが始末書と深い深い謝罪を残して退出した後で、クラリスとアンジェリーナは優雅に紅茶を楽しんでいた
「生徒の被害が出なくて助かりました。ご苦労様ですアンジェリーナ」
「いいえ、大したことじゃありません。屋根はなくなっちゃいましたけど」
言葉はあれだが、たいして悪いとはアンジェリーナは思ってはいない
グールの呼び声は根こそぎ消滅させなくてはならないのだから、あれ位はしなくては
クラリスも理解しているのでアンジェリーナを咎めたりはしない
アンジェリーナはチラリとクラリスに視線を投げる
どこか探るような視線だ
「それよりクラリス様。私の勘違いでなければあの『人間』の男の子………」
カチャッとクラリスはティーカップを置いた
そして、にこりと深い色合いの笑みを浮かべる
「あの子は私の知人の子ですが、ちょっと訳ありで………きっと、アンジー、貴方の望む『その時』の鍵になるかもしれない子ですよ」
アンジェリーナは表情を変えなかった
しかし、その瞳に宿る光が鋭さを増した
「アンジー、ダメですよ。あの子に余計なことをしては」
アンジェリーナは一つ瞬いて、胸の内の青い炎を押さえ込んだ
「わかってますわ、クラリス様…………」
アンジェリーナはクラリスの言葉に頷いたが、でもと思った
(余計なことはしなくても……ちょっかいかけるのはいいわよね?)
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帰り道、フェイトは今日一日を振り返る
魔法に関しての免疫が付いたと思えば、その認識が甘いと思い知った
目眩のしそうな程驚く事がたくさんあった
そう思った所で、本当に目眩がしていることに気付いたが少し遅かった
「ちょっ!フェイト!?」
珍しくベスの上ずった、慌てたような声を聞いた気がする
「こんな所で倒れないで!もう少しですから歩いて下さい!」
呼び捨てにはなったが、敬語が混じる喋り方はコイツの癖だろうか?
そんなどうでもいいことを考えて、そこでフェイトの思考は途絶えた


