「なっ……!?」
フェイトは急に抵抗をなくした枝に身体が後ろに傾ぐのを感じた
膨れ上がった枝の上、2、3メートルはあるそこからまっ逆さま……………のはずが、直ぐに髪にかかった力に悲鳴を上げる
「イッテー!髪掴むなよ!」
「ごめんなさい」
おかしげに謝る言葉は女性の声
本当に謝る気はなさそうな声は今の状況には場違いにも感じる
フェイトは襟足の一部を長く伸ばしている
その髪を掴まれたのだ
髪にフェイトの全体重がかかり、抜けそうになる毛根が悲鳴を上げる
髪を掴む者の姿は見えない
フェイトの視界を過ったのは流れる金髪
すると景色はあっという間に変わる
髪にかかる重力がなくなったかと思えば、フェイトは教室の床の上だった
「上の階がなくて良かった」
弾むようなその声に振り返れば、波打つ金髪の美女が立っていた
尻餅をついているフェイトはその美女を見上げる
気付けば美女の足下には黒い枝に捕まっていた3人の生徒が転がっていた
その美女は深い紫の瞳を細めて笑った
「我が名のもとに ガブリエルの誓約をここに……」
フェイトもその教室にいた全員を含めて、全てが白い光に包まれる
上空から見ればそれは大きな魔法陣なのだが、フェイトにはただ光に包まれたとしか分からなかった
そして、大きな轟音と共に黒い枝は呆気なく消滅した
「んん!わたしって天才」
そんな暢気な言葉を聞いてフェイトはため息と共に呟いた
「ありえねぇ……」
教室の屋根は消え失せ、青い空が果てしなく広がっていた


