「……グールの呼び声は……たっ確か、闇属性!」
「分かったわ」
ベステモーナは迫りくる枝から距離をとると、言葉を紡ぎ始める
「黙示録の羽根 ヨハンの静寂 ミカエルと光の矢 我の声に応えよ」
黒い枝に捕まり苦悶の表情を浮かべるフェイトに向かって手をかざす
「ホーリーウォール!」
ジェイミーは目を見開く
(魔法陣を書かない、詠唱魔法!)
ベステモーナの手の平に浮かび上がる魔法陣は弾けてフェイト元に向かう
その瞬間、フェイトを戒めていた黒い枝が消失する
ジェイミーは茫然として前に立つベステモーナを見た
詠唱魔法は難易度が高く、まだ一年生に扱える魔法ではないはずだ
ベステモーナは枝から解放されたフェイトを見て悔しそうに呟く
「やっぱり詠唱魔法は難しいわね……全部消す事は出来なかったわ」
そう言ってベステモーナは茫然としていたジェイミーを引っ張ってウィリス先生の元へ向かおうとする
確かに黒い枝はフェイトの周りの一部を剥ぎ取ったように消えているが、まだまだ枝ははびこっている
「先生が守護魔法を張ってるわ。あそこの方が安全よ」
ジェイミーは秀麗な横顔のベステモーナを見た
(レベルが違うわ……)
ベステモーナの実力はジェイミーの想像を遥かに越えていた
*****
「うわぁ!」
突然枝から解放されてフェイトは中に投げ出される
しかし、フェイトは器用に他の枝に捕まる
「ウォオ!!」
捕まった枝も先端の部分はまたフェイトを捕まえようと蠢いている
それをかわして幹の太い部分を足場に他の捕まった奴らの元へ跳んだ
「助けて!」
枝に締め付けられて苦しげに叫ぶ生徒
たどり着いたフェイトはまず首にかかる枝を剥がしにかかる
「お前ら〜!後でぶん殴ってやるから助かれ!!」
フェイトは必死に叫ぶ
だが黒い枝はびくともしない
(クッソ!ベスは俺を簡単に助けたってのに)
ぐっと悔しさで奥歯を噛み締めた
その時唐突に黒い枝が断ち切れた


