高度な技術で地上に生活する人間は、今だに空を掌握することはかなっていない

飛行機やスペースシャトルなど、空を行き交う手段は得られても、空に住むことが誰に出来るだろう?


いや、と少年は思った


フェイト・クロウリー
学園に入学できる年齢、15歳を迎えた少年は魔法学園を見上げた


外観は中世のヨーロッパ風の城に近い
白い壁に屋根は青色、幻想的に美しい建物だ


それをこの天空に浮かぶ大地に建てた奴は空に人が住む事を可能にしたのだろう
だから、俺はここに立って居られるのだろうから


太陽の光を浴びて、色素の薄い髪が金茶に輝く
短いくせのある髪だが、襟足の一部だけ銀の髪どめで止めてあり、そこだけ髪を長くのばしている
どこか愛嬌のある金色の瞳は今は不機嫌そうに細められていた


それは、入学式の行われる大講堂に向かう新入生達の視線が関係していた
少年、フェイトも同じピカピカの新入生だが、カラフルな一団から注目を浴びていた


カラフルというのは、フェイトの周りを遠巻きに視線を投げ付けながら流れていく新入生達の事だ


彼らが自分を見ているのは『種族』が違う事を知っているからだろう


フェイト・クロウリーは人間だ
つい先日までこんなラ〇ュタみたいな天空都市があるなんて知りもしなかった、ごく普通の人間だ


けれど、あのカラフルな奴らは当たり前のようにここを知ってるのだろう
何故ならあいつらは人間ではない
お伽噺に出てくるような妖精やエルフといったたぐいのものだ


だから、彼らは普通の人間とは外見がまったく違う


およそ、地毛ではあり得ないピンクの髪だとか尖った耳だとか
この道を行くのは新入生、最低15歳にはなっているはずなのに、平均的男子の身長をしているフェイトの腰に届くかどうか位しかない身長の奴がいたり
2メートルはありそうなデカい奴がいたり……


学園指定の制服を皆個性豊かに着こなしている


「マジで付いていけねぇ………」


ぼそりと、ため息と共に呟いてフェイトは大講堂へと向かった