黒に近い光を弾く紺色の髪、眼鏡の奥に隠れた黒い瞳は戸惑いに溢れていた


彼女もパートナーが決まっていないのだろう
こっちは2人だしちょうど良かったと思い、フェイトはその女の子に声をかけた


「ねぇ、君1人?俺ら薬学科の子探してたんだけど」


女の子は振り返り、戸惑ったようにフェイトとベステモーナを見た


「フェイト君、どこぞのナンパ見たいよ」

「うるせぇよ!ちゃちゃ入れるなよな」

「戸惑う女の子に変な誘い方をするからよ」

「じゃあお前が誘えよ!」


「フフッ」



フェイトとベスのやり取りに眼鏡をかけた女の子は静かに笑った
少しだけ戸惑いが剥がれた瞳は2人を見つめた


「ありがとう……良かったら2人とチームを組ませて欲しいわ」


はにかむように微笑んだ女の子にベステモーナはにこりと笑った


「ありがとうございます!フェイト君は役に立ちませんが、私が居れば大丈夫ですから」

「何人のこと貶してんだよ!」



*****



「わっ、私は……Hクラスで魔法薬学科のジェイミー・トリンドルです」


少し緊張したようにジェイミーは挨拶をする


「Aクラス、魔術式学科のベステモーナ・アイスバーンです」

「同じく、フェイト・クロウリーだ」

「フフッ……貴方達のことは知ってるわ。有名だもの」


「有名って!?」


フェイトはうなだれる
ジェイミーは何か気に障ったかとまた戸惑っている


「君に怒ってるわけじゃなくて……はぁ」

「何をうじうじしてるの?サッサと課題に取り掛かりましょう」


ベスに一番ため息をつきたくなる


(違うクラスのジェイミーにまで噂は広まってるんだぞ!)


ベステモーナは自分が入学式で挨拶をしたからだとしか思っていないに違いない
妙に鈍感なのだ


ベステモーナは先生から渡された課題の紙を開いていた
折り畳まれていた紙は学園の地図だった


「地図にマークがついてるわ」


ベステモーナは地図にあるバツ印を見て、ジェイミーに言う
フェイトも覗き込めば至る所に印はあった