ディンは手に剣を持って演習場に向かっていた
アンティーク調の請った作りの廊下を歩いていれば、同じ型の剣を持った同じ姿の人物が壁に寄りかかっていた
「ディン」
淡々と言葉を紡ぐ鏡写しの兄弟は、じっとディンを見ている
「ブラッド、大丈夫だよ」
クスリと笑うディンに、あまり表情を動かさないブラッドが微かに眉をひそめる
ディンは知っている
ブラッドは感情が薄いように見えるが、ただ表に出さないだけだ
生まれた時からの付き合いだ
無表情でも感情を読み取ることは苦ではない
「そんなに睨まないでよ。ブラッドが心配するようなことにはならないさ」
「だからって近づき過ぎだと思わないか?」
「全然。むしろ面白いくらいだ。ブラッドも今度、気配を消してフェイト近づいてみるといいよ」
バンパイアの肉体は血を吸っていれば強靭なものである
種族的に肉体が強かったり、運動能力が高い者には武器を媒体として魔術を使える魔法武術学科は最適なのだ
ディンは自分にはそれなりに実力があると思っている
魔法武術学科ですらない者に気配を悟られることはないくらいに
なのに、人間であるフェイト・クロウリーはこの二週間、ディンの気配を察知し続けた
それに苛立ち等は感じない
むしろ……面白い
「危険だ……」
「ブラッドはさ……」
ふと思いついて、ディンは飄々と笑った
「怖いだけじゃないの……?」
そう言い残したままディンは演習場へと歩いて行った
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「では3人組を作って下さい。魔法薬学科の人を1人は入れた方がいいわよ」
そう言われてベステモーナとフェイトは目を合わせる
「薬学科の子を入れろって言われても知り合いがいないな」
「そうね……あの子はどうかしら」
考えたところで、ベスが1人の女の子を見つけた
今の授業を受けているのは術式科と薬学科の生徒だ
3人組が次々と出来ていく中で、眼鏡をかけた女の子がおろおろと1人で辺りを見回していた
不安げに胸に添えられた手には薬学科の教科書が抱えられている