少し不満げに目を伏せた1つ下の後輩は言った
「俺がコウガにいた頃から子供が関わるなんてこと無かったのに……」
ネイロン・スー
彼はコウガ出身の生徒だ
琥珀の瞳に青緑のグラデーションのかかった髪
一番目を引くのは腕やむき出しの足先が、彼の本来の姿を現していること
ネイロンはコウガの統治者、水の賢者ハクロンの一族なのだ
その本性は龍
青い鱗が彼の身体の一部を包んでいる
「結界を張るのに、コウガに関係のない生徒にまで使うなんて……何かあったんじゃないのか?」
ビーンが言えばネイロンは涼しげな眉根を寄せた
「そうだと思う……けれど理由がわからない。ビーンは聞いてないんですか?」
コレにはビーンも答える事が出来ない
何となく推測はできるが、ビーンの考えは推測の域を出ない
キレると何をするかわからないネイロンに飛びして行く理由を与えたくはなかった
「私にもわからないなぁ。何にしても、君の叔父さんには何か考えがあってのことだと思うが」
ネイロンはうかない顔をしたままだった
*****
ネイロンの叔父
それは水の賢者、ハクロンだ
ビーンはこの学園に来て集めた資料を見直して、深く考え込む
(今回の特別実習……ネイロンが不貞腐れるのもわかるほど異例だ)
自分も関わらせて貰えなかった結界魔法に、関わりのないメディアの学生が参加するのだ
もちろんネイロンも参加するが、心境は面白くないのだろう
「……うーん……ただの学生達へのご褒美?いや……デメリットが多過ぎる……例えば、そう……メリットが大きい……お互いに?」
ガシガシと頭を掻き毟りため息をついた
ビーンにはこちらが与えられるメリットなど想像もつかない
あるとすれば、水の賢者と同等の力を持つ風の賢者、クラリス校長が何か握っているはずだ
しかし、それが何なのかいくら考えても分かる訳などない
重いため息をついて、ビーンはまた資料に目を落とした


