そこでも『何か』があったのでは?
いや、それよりももっと前から何かがあってアンジェリーナがわざわざ目をかけていたとしたら?
しかし、そうなってくるとクラリス・アレイスター校長も一枚噛んでいそうだ
「イヤ、まてまて……それは飛躍し過ぎか?」
ぶつぶつと思考を巡らせ始めたビーンにサンドラはため息をついて、その場から離れる
「まっ、頑張って選抜してね」
フワリと薄い四枚の羽を広げてサンドラは屋根から降りた
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フェイト・クロウリー
彼は観察すればするほど……………普通に見える
メディアに来て初めて魔法に関わったのなら成績の事は頷ける
けれど、随分長く観察を続けてみて違和感をビーンは感じ始めた
金茶の髪を揺らしてフェイト少年は走っていた
快活に廊下を掛けていくが、たまにフェイトは立ち止まる
ビーンには何の変哲もない廊下の壁に見える場所をじっと見つめたかと思うと、フェイトはその壁に手を伸ばした
すると、フェイトの触れた場所が歪んだ
「!?……なんだ」
フェイトはその中に足を踏み入れる
少年を飲み込んだ歪みは、いつもと変わらない姿に戻る
眼鏡の奥で目を瞬かせてビーンはその場所に向かった
フェイトの消えた壁には確かに魔法がかけられていた
指でその跡をなぞりながらビーンは感嘆の声をもらした
「ほぉ……これを見つけたのか。簡単な目眩ましの魔法じゃないんだがな」
メディアにはたくさん、こんな隠し通路や隠し部屋がある
しかし、それは1年生の生徒に簡単に見つかっていいものではないはずだ
ビーンもその中に入ろうとすると、後ろから肩を引かれる
「!?」
「やぁ、マーチス君。こんなところでどうしたのかな?」
振り向いたビーンは身体を強張らせた
「アッアンジェリーナ先生!?……どうしてここに!?」
「私が先に質問しているのだけどな」
にっこりと、紫暗の瞳を細めて凄まれる
怒っている訳ではないようだが、土下座をして謝りたくなるような迫力があった


