今回、水の都に立ち寄ったのはハクロンと取引をするためだった
ハクロンの領地で行われる結界をはる魔法
近年、大規模な結界を張るだけの人員が減少していた
しかし、それは外の者に干渉させる程切迫した状況ではなかった
問題は2つの出来事が重なった事だ
1つは結界にハクロンを含め、たくさんの人材を裂かなくてはならない事
もう1つは、コウガの周辺にデスイーターの群れが集まった事だ
そのどちらもハクロンの力が必要だった
しかし、同時に行うことは出来ない
そこへ、クラリス・アレイスターから連絡があった
『学園の生徒に結界を張る作業をてつだわせる。その変わりにデスイーター殲滅はメディアが行う。作業はメディアをコウガの領地に停泊させて行う』
『ついでに』クラリスがデスイーターにかかっている間に起きた厄介ごとはハクロンの采配で処理する
そのついで、の方が厄介だったのはクラリスの策略を感じてならない
嘆息してからハクロンは礼を述べる
寝そべったままなのは大目に見てもらおう
「何にしろ、礼を言う。助かったよ」
「いいえ。お互い様です」
言って、立ち上がったクラリスは闇夜に向かって呟いた
「世界の均衡が狂い始めた今、何ももとには戻りません……ならば、変革が必要なのですよ」
静かな月明かりに照らされたクラリスの横顔を眺めて、ハクロンは何も言わずに目を閉じた


