「まぁ、その厄介事を引き受けたのはクラリスだ。私が口を出す事ではない……が、結界を張るのに影響があっては困る。だから、わざわざここまで来てもらった」
緩慢な動作で長椅子から立ち上がり、ハクロンはフェイトの前に立った
この部屋は魔法術式の中心地だ
ここならばハクロンもいて万が一、干渉されても対応がしやすい
一応、魔眼の少年は納得したのか複雑な表情で顔を伏せた
その後ろにいるバンパイアの少年は、ハクロンがため息をつきたくなる程暗い表情をしていた
その少年に視線を向けてハクロンは言った
「闇属性のバンパイアは綱渡りをしてるようなモノなんだ。そっちの掟に私は干渉する気はないが、一言言わせてもらえば……君は覚悟を決めるべきだな」
顔を上げた端正な顔の少年はハクロンの目を見返す
心なしかその紅い瞳が不安げに揺れていた
「こうなってしまった以上、お前自身が腰を据えてかからなければ……全てを失うぞ」
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「ハクロン」
かけられた声に長椅子に寝そべっていたハクロンは首だけ向けた
「……クラリス」
「お疲れ様でした」
柔和に微笑んだ女性は腰を屈めて視線を合わせた
過ごした年月を刻んだ顔の皺さえ気品に漂う女性だが、その笑顔の食えなさを知っているハクロンは顔をしかめる
「どうなってるんだ?お前の生徒は」
「面白い子でしょう?」
「………厄介だとは思う」
さらりと何でもないように言ってしまうクラリス
確かにアレは面白いだろうが、1つの領地を持つ身であるハクロンは危機感を覚えてならない
「バンパイア一族がお前の学園にはいるだろうが……酷な事だ。そのうち他の生徒も気付き始める。最後には……世界も『奴ら』も気付くぞ」
ハクロンの苦言にもニコリと笑ったクラリスはサラリと話を変える
「フフ、奴ら……デスイーターなら追い払いましたよ」


