肺から全ての空気を吐き出すように息をついたハクロンは部屋の隅に置かれた長椅子に寝そべる
怠い身体の力を抜いて深呼吸をした
ふと、思い出して指を鳴らした
「わっ!?」
弾けた球体から人間の少年とバンパイアの少年が転がり出た
「おい……あんた」
「なんだ、魔眼の少年?」
「俺はフェイトだ」
気だるげに言われた言葉に覇気はない
心底、疲れが滲む声音にかまわずフェイトは言った
「魔眼ってなんだよ!それに強引にこんなとこに連れて来といてなんだよその態度!」
ハクロンは自分の体勢を見下ろして、確かにと、1人納得する
長椅子に寝そべっているのだ
はたから見れば失礼極まりない体勢ではある
「魔力をたくさん使ったんだ。これくらいは目をつぶって貰いたいな」
納得がいかない、といった風なフェイトにハクロンは続けた
「魔眼とは生まれつき魔力が甚大な人間が稀に持つ特殊な眼のことだ。だからだろうな、バンパイアはその血に必要以上に惹かれる」
ブラッドは息を呑む
「そして、その特異な力のせいで魔法にまで干渉する事がある」
フェイトはハッとした
いつだったか、リーバがブォルフに向かって発動した魔法に巻き込まれた事があった
その原因は結局謎のままだ
もしかしたら、あれは自分がリーバの魔法に干渉してしまったせいなのだろうか?
自分にその自覚がないとしても
「俺はメディアに入るまで魔法だとかに関わったことないんだ。なのに魔眼?信じられない」
「自覚はなしか……厄介な事だ」
ため息と一緒にこぼされた言葉にムッとするが、ハクロンの言葉を否定する事のなかった友人達を思い出して口籠もる


