世界は疲弊していた
限り無く生まれ出るデスイーターとの戦いは気が遠くなるほど昔から続いているが、それに対抗できる逸材は減少していた
だだし、減少していると言ってもここ数百年の間の出来事なのだ
魔法使いを育成する学園都市が増え始めたのも同じ時期
こちらの世界の各都市が魔法学園の支援を始めたのは必然だった
そして、稀に生まれる強大な魔力を持って生まれたもの達を『賢者』と呼ぶようになったのは
世界がソレを求めていたからにほかならない
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「ケホッ」
悠然とかまえていたハクロンが顔色を変えたのはフェイトを調べた後だった
ベステモーナは動かす事のできない身体を強張らせて、ハクロンの目的を注意深く観察していた
この、海に包まれたかのような魔法は恐らく幻だ
しかし、その干渉力が強すぎて振りほどく事が出来ない
水に顔まで浸かっていたフェイトが解放されると、ハクロンは頬を引きつらせて笑った
「オイオイ、お前本当に人間なのか?」
フェイトを包んでいた水は全て引いて、身体に自由が戻る
たたらをふんでフェイトが軽くハクロンを睨んだ
「失礼だな、俺は人間だ」
「……そうだろうな。じゃなきゃそこのバンパイアが欲望に負けるはずが無い」
フェイトが目を見開けば、ハクロンは顎でブラッドを差した
「『人間』がクラリス以外でこのメディアにはそうはいない」
「ブラッドは俺を助けるためにしたんだ!」
苦いため息をついてハクロンは瞳を鋭くしたフェイトを見た
「別にそこのバンパイアを責めているわけじゃない」
こちらにも落ち度があるから、とまではハクロンは学生達に教えるつもりはなかった
責めているのではないとわかったから、フェイトの表情は安堵にかわる


