「そこの龍が侵入する時に魔法を緩めた影響で他の部屋にいた奴らが一緒に引き摺られたみたいだな。取り敢えず壁や床を傷つけるなよ」


それから、とマックスはフェイトとブラッドを見据えた


「部屋で何をしようと勝手だが、危険と穢れのつきまとうような行為はするなよ?」


なんとなく、吸血とサクリファイスの事を言われている気がしてフェイトはギクリとしたが、ブラッドは落ち着いて頷いた


言いたいことだけ告げるとマックスは消えたが疑問は残っていた



「ところで、貴方は誰ですか?」


ベステモーナが怪訝な目を向ければ、青年は不敵な笑みを浮かべる
覇気と呼べばよいのだろうか、学生のベステモーナ達など容易くからめとってしまうような凄味があった


「私はハクロン。コウガの統治者だ」


それを聞いてフェイト以外が驚きに目を見開く
ハクロンは不意にパチンと指をならした


景色が歪む


フェイトは部屋に水が流れ込んで来たように見えた
渦を巻いて、波が打ち寄せて来るようにフェイトの部屋を包んだ


その水は足下から這い上がりフェイト達を捕える


「なっなんだ!?」

「ちょっと、手荒くありませんか?」


丁寧にリーバは言ったが、軽く非難を含んだ声音だ
ディンも同じく不満の声をもらした


「突然過ぎて僕らついていけないんですけど?」

「用件は簡単だ」


ハクロンは5人の生徒を見据えて言った


「これからコウガに結界を張るところだ。しかし、問題が発生した。今、コウガの領地にいるメディアの中に『穢れ』が発見された」


『穢れ』という言葉にブラッドが反応した


「……その穢れはもう消えたはずだ」

「だが、その理由を知らなくてはならない」


琥珀の瞳が射るように鋭くブラッドを見据えた


ハクロンの威圧とは違う意味で背筋に冷たい汗を流す