魔術式学科



魔術には様々な方法がある


基本的なものは精霊の力を借りる魔法陣を使うもの
髪や血を代価にスペルを用いて魔法を行使するもの
スペルと魔力だけを使うもの
魔法陣に近いが、決まった媒体と式を使い魔法を使うもの等がある



「では、アイスバーンさん白魔術書の第2章30項の魔法陣を使ってみて下さい」


先生がベスを教壇の前に招く
普段から姿勢が良くて、更に生来の自信たっぷりな彼女は胸を張って教壇の前に歩いていった


「では、やって下さい」

「はい」


先生からチョークを受け取り、ベステモーナは足下に魔法陣をスラスラと書いていく


書き終わると魔法陣の上に手をかざして発動のスペルを唱えた


「聖なる羽 西の矢じり ゴンドラを射ぬけ」


フワリと魔法陣一帯に不自然な風が集まる
チョークで書いたはずの魔法陣が微かに光を放つ


「ライムラム!」


ボスンと音をたてて現れたのは白い羊だった
両手のひらに乗るほどの大きさしかなく、魔法陣の上で中に浮いている


「よくできました。さすがですね」


先生は満面の笑み、教室には拍手が溢れた



「ベステモーナはスゴいねぇ」

「……そうですね」


陽気に笑ったのはディン
頬杖をついて不満げな顔で呟いたのはフェイト


違う学科のディンだが、同じように受ける授業がない訳ではない
ディンは同じ授業の時はだいたいフェイトとベステモーナの近くにいた


授業を受け始めて約二週間


フェイトはまだ、ほとんどの魔術が使えない
隣で教えてくれている(頼んではないが)ベステモーナは本当に優秀だった


「何で俺は出来ないんだ?」

「あはは、ベステモーナと比べない方がいいよ。彼女は純血のエルフだから、潜在的な魔力が違うし、エルフは精霊と仲が良いしね」

「純血?」


聞き慣れない言葉に首をかしげてディンの顔を見れば、説明してくれた


「エルフにも色々あるんだよ。他の種族と混じってないエルフは純血、混じってるとハーフエルフって言うんだ」