「おい。勝手に不法侵入してんじゃねぇよ、龍の」


扉を開いた人物はぞんざいに謎の青年を見やった
迷惑そうに睨みながら


「私の館にはデリケートな魔法を施してんだよ。いちいち手間掛けさせるな」

「それはすまなかったな。以後気を付けよう」


切り裂くような言葉も気にせず青年は詫びる
その青年に怒鳴り付けているのはその言葉遣い似合わない女性だった


我が物顔でこの洋館の事を語ったがフェイトには見覚えがない


「あの、貴方たちどちら様ですか?」


ごく自然に言った言葉は、煙草を慣れた手つきで吹かした女性によって一蹴された


「何を寝呆けた事を言っている?私はこの館のオーナーのマックスだ」

「えっ?……えぇぇえ!?」


声を上げたのはフェイトだけだったが、ディンやベスも驚いたように目を見開いていた
リーバは特に興味もない


「女性だったんですね」

「しかも、ハーフエルフの」


少し尖った耳に白い肌
着くずしたカッターシャツとジーンズというラフなスタイル
空色の髪と瞳が水の清涼さを思わせる


たまに降ってくる、用件だけ書かれた紙の印象から男性だとフェイトは思っていた


「煙草やめてくれないかな……」


部屋の中で吹かし続けるマックスにぼそりと呟けば、青年を睨んでいた瞳がフェイトに矛先を変えた


「これは、お前達人間の吸い散らかしている有害物質とは異なる物なんだよ。喚くなガキが」

「……スミマセン」


確かに、煙草特有の嫌な臭いはしない
人間界の煙草に似てはいるが、少し違ったようだ
迫力負けしたフェイトは素直に頭を下げた