ハクロンは一旦、術者を待機させて窓辺に立った


コウガを見下ろせるハクロンの一族が所有する館
窓の淵に足をかけてそのまま前に踏み出す


夜の闇


薄い月明かりを弾いて鱗が光る


ハクロンは人型の姿を翻し、その形を現す
天駆ける龍が青緑の鱗を輝かせてメディアに降り立った


場所は趣のある洋館


「さて、穢れはどこかな?」



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気配を感じて、その人物は遠慮なく眉間に皺をよせた
苛立った様子で煙草をくわえた口から煙を吐き出す


「面倒な奴がきやがったな」


チッと、舌打ちすらもらして低く呟く


「ゾフィーの野郎、ただじゃおかねぇ……」


パチン、と指をならして面倒な準備に取り掛かった



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「うわぁぁぁ!?……えっ?……うわぁぁぁ!!?」

「フェイト、落ち着きなよ」

「いや!逆になんでお前はそんなに落ち着いてんだよリーバ!?」


フェイトが声を上げたのも無理はなかった
あまりにも突然それは降ってわいたのだ


フェイトは遅くなったが、リーバの作ったスープを晩ご飯代わりに食べていた


すると、突然
まさに降って来たのだ、ベステモーナにディン、ブラッドが
そして、もう1人
見知らぬ青年が


「何!?何なんです?」


さすがのベステモーナも戸惑い、やや慌てている
ディンとブラッドは取り乱してはいなかったが、その表情は呆気に取られている


それも当然な話ではある
3人はそれぞれ自室にいたはずなのだから


謎の青年は何かを探すようにキョロキョロとフェイトの部屋を検分していた


しかし、その男は異様な身なりである
中華風の服と珍しい青緑の髪、鋭い光のこもる瞳は琥珀色だ


青年がフェイトに目を止めて何かを言おうとした瞬間、乱暴に部屋の扉が開かれた