バカだね


そう、リーバは言った


「そうかな?」

「そうだよ。ボクがフェイトなら断るね」

「でも、ブラッドがああしてなきゃ俺は死んでたんだろ?」


ため息をついて、作ってあったスープを温め直す
リーバはそれをかき混ぜる


「だからってお人好し過ぎないかな?」

「だからって見捨てられないだろ?」


ムッとしてリーバは口を尖らせる


「フェイトってやっぱり変なんだよ。お人好し、バカ、単細胞」

「おい」

「……フェイトはわかってない。ちゃんと血を吸われたことないから恐がらずにいられるんだよ」


確かに、とフェイトは思った
行儀悪くスプーンをくわえたままイスにひじをかける


「じゃあ俺はバカなんだな」


キッパリと言い切ったフェイトにリーバは呆れたような視線を向けた
けれど、どこか小気味よかった


「本当にフェイトは変わってる。だからあの兄弟が気に掛けるのかな……」



*****



「配置は済んだ。各所、重要拠点の魔術師は魔力の微調整に細心の注意を払え」


人を奮い立たせるような強い声に術者達は気を引き締め直す


「仕方がなかったとはいえ、学生が何人も混じってる。魔力の配分は俺たちでカバーするぞ」


着々と準備が整えられていくなか、水晶に1人の術者から知らせが入る


「ハクロン様、『穢れ』が」

「何?」


気を高めていたハクロンは眉根を寄せる


「クラリスは何を……」


そう毒づいて、自分がクラリスに頼み事をしていた事を思い出して言葉を呑み込む


クラリスは自身の魔法騎士を連れてハクロンの頼み事を片付けに行っている


術者から更に情報が入る
しかし、それは混乱を極めるものだった


「ハクロン様!?穢れがメディアにございます……あっ、今、消えました」

「?……どういう事だ?」