『サクリファイス』
それはバンパイアとの契約者をさす言葉だ
意味は『犠牲』
バンパイアは無差別に血を狩る訳ではない
滅多な事では人間を殺さない
そのために強い催眠術(マインドコントロール)をかけて血を吸った人間の記憶を消す
そうして、人間界でその存在を隠して来たのだ
しかし、バンパイアには特殊な契約がある
特定の人間をバンパイアは自分の「モノ」にする
端的に言ってしまえば、その人間が死ぬまで自分の餌にするということだ
死が2人を別つまで
バンパイアはそのサクリファイスの血を独占できる
バンパイアにとって特別な契約者
それがサクリファイスだ
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「サクリファイスなら成人前に吸血してもなんとか許されるかもしれない」
鏡あわせのように同じ顔の口から出る言葉にブラッドは顔を悲痛に歪めた
「……それだけは出来ない。フェイトの自由を奪う事になる……」
「その代わりにブラッドは自分が死ねばいいと思ってるの?」
そんなつもりはなかった……しかし
ブラッドは言葉をつまらせる
どの道、禁忌を犯した代償を支払わねば何かを失う事になる
「そんなの絶対に許さない」
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幼い頃から、2人で過ごしていた
2人は異端だったから
2人は人間界の辺境の地に隠されるように追いやられていた
けれど、それでかまわなかった
2人で一緒にいられたら他の事は何だって良かった
優しすぎる片割れを蔑む両親と他の一族が向ける侮蔑だけが煩わしかった
そうして、15歳になった2人は魔法学園-メディア-の入学を決められた
理由はわからない
今更、学校へ行くことに何の意味があるのだろう?
何か引っ掛かりをディンは覚えた
特に興味もなく入った学園
しかし、そこには意外に興味深いことがたくさんあった
しかし、同時に胸騒ぎもとめられなかった
大切な片割れが遠ざかる
そんな……胸騒ぎが