髪をグシャグシャと掻き混ぜてフェイトはため息をついた
それに僅かに苛立ちが含まれる
「完全に俺のせいじゃんか……」
「何を情けない事を……パラサイトの事は事故です。それをブラッド君が助けた。それだけです」
フェイトはベステモーナの目を見返して瞬く
次に、憔悴した様子のブラッドに視線をやる
「ブラッド……ありがとう。助かった」
大きな絆創膏のはられた首筋を無意識に手を当ててなぞった
それを痛ましげに見やったブラッドは小さく呟いた
「いや……いいんだ」
「よくねぇよ。何とかその、掟破りの罰を受けずにすむ方法はないのか?」
「1つだけあるよ」
割り込んだ声に3人は玄関に視線を向ける
ちょうど、袋に血液パックを入れたディンとリーバが帰って来た所だった
「ディン!」
ブラッドが短く叱責した
ディンはそれを無視して、ごく軽く言った
「フェイトが『サクリファイス』になればいい」
ディンがそういった瞬間、怒気をあらわにブラッドが立ち上がり、有無を言わさずディンを外へ引きずっていった
呆気にとられるフェイトとベスにリーバは何でもないように笑って見せた
「兄弟喧嘩は首を突っ込まない方がいいよー」
「……サクリファイスってなんだ?」
*******
ディンをすぐ隣の部屋に引きずり、胸ぐらをつかんだまま乱暴に壁に押し付けた
「どういうつもりだ!?」
「どうもこうもないよ」
合わせた瞳には互いに激しい怒りがこもっていた
ディンは怒っている
勝手に禁忌を犯したブラッドに、そして為す術のなかった自分に対して
「それしかないだろ?ブラッドがフェイトの血を吸ったせいだ」
憤りにも似た感情を押し殺した声でディンは淡々と言った
「フェイトをサクリファイスにしないと……ブラッドがどうなるかわからない。なら、僕はどんな事をしてもフェイトをサクリファイスにする」


