酷い倦怠感があった
体が重い
「ブラッド……俺は何かできないのか?」
目覚めたのはいつかは分からない
ベスとブラッドの声が聞こえて来て、必死にそれを耳に拾おうと意識を研ぎ澄ませた
話の内容が頭に入って来て血の気が引く思いだった
俺のせいで……禁忌を犯させた
その意味さえ俺はわかっていない気もするが
そう思うと、口をついてその言葉は出た
「フェイト!大丈夫ですか?」
ベスがすぐさまベッドに駆け寄り額に手を当てる
熱はなく、目はちゃんとベステモーナを捕えていた
「俺は大丈夫だって。それより……今の話、もう少し詳しく聞かせてくれ」
*******
袋に血液パックをたくさん詰め込んで、ディンとリーバは歩いていた
ずっと沈黙を保ったまま2人はアパートへ向かって歩き続ける
しかし、不意にディンが口を開いた
「リーバはあいつらに忠実か?」
あいつら、とは何か直ぐにわかった
嘲笑するようにリーバは言った
「ボクの一族が『あいつら』とは距離を置いてることくらい知ってるでしょ?」
「念の為にね」
「もっとハッキリ言ったら?」
リーバが立ち止まる
ディンも数歩先で止まり、振り向いた
「双子君たちの敵か、味方か。どっちだって」
問うようにディンの視線が向けられる
ため息をついてリーバは言った
「ボクは味方じゃない。でも、敵でもないよ。最初はね……関わりたくなんかなかったけど。興味が出て来たら、もう止められないし」
リーバはもう、深く首を突っ込みすぎている
これから起こるであろう事を回避は出来ない
ディンは読めない瞳でリーバを見返している
同じ赤い瞳
今度は静かにリーバが問う
「どうするの?」
これから
掟の網目を抜ける方法はある
それを使えばブラッドは助かるだろう
しかし
「フェイトはどう思うかな」
ディンはポツリと呟いた


