ベステモーナは目を見開いて呟く
「……それは……治療は」
「……出来ない」
硬く、ブラッドは答えた
腕に触れただけでわかるほど熱いフェイトの首筋には、濁った闇色の物体が張りついている
しかし、それは張りつくというよりも頸動脈に埋め込められているように密接についている
それが、フェイトの鼓動のように脈打つ
まるでフェイトの全てを吸い上げているかのように
「本当に!?打つ手はないの!?」
ベステモーナの悲痛な叫びにブラッドは息を呑む
しばしの重い沈黙
そして、ブラッドが呟いた
「方法が……無いわけじゃない」
「ブラッド!?」
ディンが鋭く叱責の声を上げる
リーバも信じられないと言うように呟いた
「ブラッド……それ本気で言ってる?」
「何なんです!?方法があるなら……!」
「けど!」
ディンが叫ぶように言って、ブラッドの肩を掴んだ
「それは一族の禁を犯す事になる……ブラッド……それでもいいって言うのか!?」
ベステモーナは飛び出しそうになった言葉を呑み込む
一族の禁……それはどの種族でも大切な掟だ
破れば、ただではすまない
「だが……このままじゃフェイトは死ぬしかない」
パラサイトがいるその場所がドクリと脈打ち、心なしか大きくなったように見える
一刻の猶予もない
ブラッドは数瞬の間、瞑黙し意を決して言った
「パラサイトを取り除く……扉を閉めろ」