声が聞こえる
暗い暗い声だ
這いずり回るように身体の中で渦がまく
その声は、前にも聞いたことがある気がした
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「フェイト!」
フェイトはビクリと目を覚ました
「……何だよ」
「居眠り?せっかくお詫びにご飯作ったのに」
リーバは寝起きのフェイトの顔を覗き込んだ
そう言えば、海に落としたお詫びにと、晩ご飯の用意をフェイトのアパートでしていたのだ
「……それ、食える物質なのか?」
「フェイトって意外と失礼なことバンバン言うよね」
気にした様子はなくリーバはフェイトを急かした
ソファーから身体を起こす
「ほら!冷めちゃうじゃん」
「美味そうな匂いだな」
「フェイトもね」
「それ笑えねぇ」
部屋に漂う匂いは確かに美味しいそうだ
しかし、リーバのブラックジョークには顔をしかめる
コンロの前に立つリーバは服装もあってパッと見、普通の女の子にしか見えない
しかし、その正体は男のバンパイアだと思うとため息がこぼれた
「何が悲しくて男の手料理を食べるんだか」
「じゃあ、ベステモーナに頼む?」
「それは遠慮します!」
フェイトとリーバが席に着くとドアを叩く音がした
リーバはつまらなそうに顔をしかめた
「はいはーい……やっぱお前らか」
扉を開いてフェイトは呆れた
ディンとベステモーナがそこにいたからだ
「こんばんはぁ」
「フェイト、大丈夫ですか?」
ディンはからかう気満々に、ベステモーナは生真面目に心配していた


