本を持つ手に無意識に力がこもる
「フェイトの父親に会ったんだ……」
「は?何でフェイトの父親?」
「黎明とかいう特別講師もいた……その人達に助けられたんだ」
「……ちょっ、ちょっと待った」
ディンは上半身を起こしてブラッドの顔を覗き込む
「話が突飛すぎる。どういうこと?」
「……それを言えたら苦労してない……フェイトには内緒にして欲しと言われた」
本当に困り果てたようなブラッドにディンもそれ以上問い詰める気にはなれなかった
「フェイトって謎すぎ……」
ディンはそれで話を終わらされると思ったが、何かを考えるようにブラッドは呟いた
「……フェイトは狙われる……だから、メディアで強くならなくちゃならない」
「え?」
「そう言ってたんだ……空の賢者が……フェイトの父親だと言った人が」
切ない色の瞳と悲嘆のこもった声色が頭から離れない
「フェイトに惹かれるものがあるなら、覚悟を決めろ………」
ゾフィー・クロウリーは言った
『フェイトの力は狙われる。本人がどう思おうとも……これからこの子に関わるのなら、それなりの覚悟がいる。出来ないなら………』
「覚悟が出来ないなら……一緒に居るべきじゃない。自分の為にも………」
ディンは目を見開いてブラッドを見据えた
清い風が吹き抜ける
すぐ近くの水辺にはフェイト達が楽しげにしゃべる声が響いているのに、何故か酷く遠くに聞こえた


