人魚といえばジェイミーだが、人間型の姿しか見たことがない
初めて、童話などで語られる人魚の姿を見てフェイトは見惚れてしまった
少女達が戯れる姿はとても幻想的だった
「やだ、お客様だわ」
特に不快に思っている訳ではなく、楽しげに1人の少女が声を上げた
フェイトは少しあわてて手を振った
「ぁあっと、俺たち覗きとかじゃないから!散歩してて」
気にした様子もなく少女達はクスクス笑う
皆、興味津々にフェイトとディンに近寄って来た
ベスとブラッドも次いで顔をのぞかせて、少女達に囲まれる2人を見て目を丸くする
「ディン・サバティエ君とフェイト・クロウリー君だわ」
「あら、ブラッド君は一緒じゃないの?」
「一緒に遊びましょう?」
「こっち、こっち」
口々に囁いて、1人の少女が手を延べた
フェイトの手を握って、誘うように引き寄せる
「一緒に遊びましょう?」
ゆっくりと引き寄せられたがハッとする
今は真冬だ
そんな時期に海で泳ぐことは出来ない
「ちょっと待った!今、冬だぞ」
「大丈夫よ、おいでおいで」
フェイトは絡められた手をなかなか振りほどけない
ディンは笑って受け流している
ベスは眉間にしわをよせてフェイトを睨んだ
「……何をしてるんです?」
「何で俺を睨むんだよ!助けろよ」
少女は笑いながら一際強くフェイトの手を引いた
濡れた足場に踏ん張りはきかずフェイトは落ちる、と思った
「……!」
「ヘレナ!やめて!」
慌てたような少女の声がした
それはどこかで聞いた憶えがある
少女はムリにフェイトを引っ張っていた手を解いて水の中から姿を現した
「ごめんなさい、ちょっとふざけてただけなの」


